2023/01/15 22歳の原点ノート「チャット」
コンタクトを取らずに布団に包まる。
そのまま寝てしまわないように、と頭で自分に言い聞かせる。
近頃はこんなリスキーな事はしていない。
いくら注意していても、眠気には逆らえない事を過去の失敗で知っている。
それだけ部屋が冷えていて、すぐにでも温まりたかったのだろう。
いくら目がゴロゴロして気持ち悪くても、体温で温まった布団からは出られない。
そんな状態から何とか抜け出したのは、就寝予定時間の深夜三時を過ぎた所だ。
コンタクトを外すとすぐに楽になった。
今から風呂に入ると就寝時間がさらに遅く成ってしまう。
今すぐに眠れば、まだ二〇分程度の遅延で済むので入浴を諦める。
この選択は正しかったが、続けてきた実績が止まってしまった。
そもそも、もっと早く動き出せば両方クリア出来た筈だ。
後悔しながら眠りに就いた。
意識は戻ったが目が開かない。
結構な時間を寝て過ごしている実感はあった。
ようやく目を覚まして、確認した時刻は午後一二時半。
着実に失敗が連鎖してきた。
そのまま動画を見て過ごす。
一四時になった所でようやく動き出す。
シャワーを浴びる。
最近体のあちこちが痒い。
湿疹が出来ている。
昨晩は入れていないが、普段は朝晩、体はしっかり洗っている。
一つ考えられるのは、歯医者で銀歯が付いたことで金属アレルギーを発症しているのでは無いか、と言う事だ。
その為に歯医者へ通う気はない。
お金も時間もこれ以上消費出来ない。
早く売れて生活を安定させる以外、道は無いと思った。
そうなれば、銀歯をセラミックに変える事にも躊躇は無い。
風呂を上がり、無難な服を着る。
今日は外に出る気も、創作をする気も無かった。
幸い、キッチンは昨日片付けていたので、すぐに料理に取り掛かれた。
一年以上前に大量に仕入れたプロテインに、パンケーキ用のパウダーが付属していた。
引っ越しでも捨てずに持って来ていたのだ。
市販のパンケーキ粉に水と卵を混ぜ、そこにプロテインパウダーを加える。
ココア味のようだ。
バターが残り少ないため、食べる時に乗せる用に取っておく。
代わりにオリーブオイルをフライパンで温め、生地を焼いていく。
ゆっくり火を通す事が重要で、中まで火を通せるように蓋を締める。
ひっくり返してもう片面焼いている内に米を研ぎ、ボールをセットして炊飯のスイッチを押した。
パンケーキを皿に移してから、バターと蜂蜜を付けて食べる。
間違いなく、普通のパンケーキの方が美味しい。
生地自体にプロテインらしい苦味と甘みが混じっていた。
2枚を焼いて食べたが、お腹が一杯になる。
まだ残り一枚半ほどの生地が残っているので、晩御飯にしよう。
すぐに炊飯完了の音が鳴る。
もうお腹一杯だったが、食べ始める事にした。
肉じゃがを温めて器に装う。
無機質になった舌には、旨味が詰まった肉じゃがが嬉しかった。
意外と簡単に食べ切る事が出来た。
それからPCを弄っていると、チャットにのめり込んでいく。
最初に”服”とタイトルが付けられたルームに入る。
ファッションについての話をしている。
新しく買った服も含めて、自分のファッションに対する評価が欲しく成った。
絵を描くために準備した木の板に、私服を上下セットで並べ、四種のコーディネートの写真を撮る。
許可を貰い、撮った写真を送信する。
”若者がおっさん風のコーデを好んで着ているよう”と言う感想を貰った。
結局一人からしか感想を貰えなかった。
自分のファッションを言語化すると”おっさん風”になるのか、と納得した。
別の部屋に移る。
”小説作業部屋”は、メッセージが飛び交っていた。
部屋の主は元漫画家で、都内の麻雀仲間の編集者から「売れるから描いてみないか」と誘われて作家デビューを果たしたらしい。
僕は、創作なら何でもやる人間として話に加わった。
創作には勝ち負けはは無いのでは?という発言に異論を唱えた。
”どこまで割り切っても、創作する事だけを愛し続けられ無いと思っている”。
”生きている内に売れ無ければ負け犬になるという意味で、勝ち負けがあると思っている”と伝えた。
部屋の主は初めから冷静なキャラで、熱く言い返して来る事も無かった。
僕はその部屋に潜って、今日の日記を書き始める。
今日は他に何もしていない。