2023/02/05 22歳の原点ノート「余裕」
一〇時のアラームで目を覚ましたが、二度寝してしまった。
次に意識が戻ったのは一三時。
動けずにいると一五時に成った。
ようやく起き上がると、暖房を切り、シャワーを浴びる。
指にワセリンを揉み込む。
これを始めてから三日目。
裂け目が消え、指先も過度に乾燥しなく成った。
これで一日中痛みと痒みに悩まされずに済む。
ただ、これを辞めてしまえば直ぐ元通りに成る予感がする。
作業にも集中出来無く成るので、気を付けよう。
スマホを見ると、Slackに返信が溜まっていた。
それぞれアドバイスを貰った。
最近、人からの連絡に対して、ちょっとした余裕の持ち方を心得た。
作品の意見交換をする仲として、LINEで繋がった友人がいる。
最初、連絡が遅くて参った。
そんな関係は直ぐに絶たれるのだろうと予想した。
しかしそれから一週間、何事も無かった様子で連絡が入った。
その後直ぐに返信しても、又待たされる。
それを続けてみて、分かった。
彼女からの連絡は遅いが、確実に来るのだ。
こんなペースのやり取りも有りなのだ、と知った途端、焦る様な気持ちは無くなった。
それでも僕は、二十四時間以内には返信する事にしよう。
だから二人の先生に対する返信も、焦らずにいこう。
洗濯物をハンガーに干してから、部屋を出た。
今日も一〇〇均でミレービスケットを手に取る。
インスタントの蕎麦が入荷していたので、ついでに買っておこう。
レジに並びながらドリンクコーナーを見る。
ホットメニューには目星いものは残っていないので、アイスコーナーからラテを取り出す。
200ポイント、期間限定の分から落ちるので、いつもより気楽な買い物だった。
そのままアミコに移動する。
クリエイターフェスティバルに寄ろうとしたが、既に片付けが始まっていた。
結局、一昨日の生徒の名前は分からず仕舞いだ。
穴場の席を確保して、ビスケットを食べる。
まずは三〇分間、日記を書こう。
今日の名刺は、ゼロから作る必要がある。
朝サボった分、少し急が無くてはならない。
ノートに描いた九案のラフを見て、今日中に終わらせられそうなものから選んでいる。
後半、ジリ貧に成りそうだ。
作るものを決めた。
家の型の中に文字を押し込んだようなデザインだ。
Pinterestで探したこの案の参考資料は三角屋根だったが、四角に変えよう。
家主が所持するビルが四角だからだ。
現場の写真を見る。
写真で取った際、少しローアングルに成る、と言う気付きを活かそう。
建物の縦線模様も薄く入れると、元のアイデアのパクリ感は出ないだろう。
四角にすると、家で有る事が認識し辛いので、窓も付ける事にする。
光の反射なども拘り始めて、無駄に時間が掛かった。
昨日と同じく閉館ギリギリで、C案の名刺が完成する。
荷物をまとめ、部屋に戻った。
鍋に沸かしたお湯に蕎麦を二束入れ、シンクに溜まった食器を洗う。
茹で終わった麺を水で締めて、市販の蕎麦汁と山葵を絡めて啜る。
蕎麦は冷たい方が美味い。
だが、余り腹に溜まる気がしない。
冷凍庫に保管してあったビスケットも焼いて食べよう。
そう思い取り出そうとするが、手前で固まった鶏胸肉が邪魔で取り出せない。
鋏やドライバーなどで張り付いた氷を砕くが、全く抜けない。
こう言う時僕は、意地でも取り出したく成ってしまう性分だ。
ポットでお湯を沸かし、冷蔵庫の中身を全て取り除いた。
冷蔵庫を寝かせて、熱湯を氷に掛けて溶かしていく。
一回では終わらず、三回ほどその作業を繰り返す。
その間、冷蔵庫に溜まった水を布巾で吸い、シンクに絞る。
まだ日記とA案、B案の修正が残っているのに、何をやっているのだろう。
ようやく外れた鶏胸肉の袋はズタズタに成ってしまったので、今日中に調理する。
カレーに使おうと思っていたので、作業が終わったら散歩がてらルーを買いに行こう。
ビスケットは冷蔵庫の溜まった汚い水に浸ったかも知れない。
軽く水洗いはしたが、食べるかは分からない。
既に二二時半に成っているので、作業を優先しよう。
カレンダーから通知が入る。
明日から一六日まで図書館が閉館する。
以前、カレンダーに残していたが、忘れていた。
それに明日は失業保険の手続きの為に、ハローワークへ行か無ければならない。
九時から一一時半までなので、寝坊にだけは気をつけよう。
作業中、天井から久しぶりに鼠の足音が聞こえた。
コンロ下の隙間を塞いでから、音沙汰無かったのだが、まだ居たのか。
もう抜け道は無いし、突破されたなら痕跡が残る。
電線を齧られ無いかだけは気掛かりだ。
屋根裏に上って本格的に対処したい所だが、中々勇気が出ない。
もう暫く様子を見ようと思う。
昨日、風呂場でふと”レミーのおいしいレストラン”が見たく成ったのは、確実にそいつの影響だろう。
冷たくなる湯船の中で、最後まで見続けた。
主人公が鼠の指示に従って動き、料理人として認められていくのが、この作品の途中までの話だ。
主人公自身には成長が無く、駄目な奴のまま終わるのかと思ったが、一番の見せ場ではローラースケートで店内を滑り、たった一人でウエイターの役割を果たす、と言う意外な才能を見せた。
今になってみる事で、更に理解が深まる。
きっとそんな作品が、山程有るだろう。
とりあえず、レミーに従って衛生的では無いビスケットは捨てる事にしよう。